医師と債務整理〜医者が自己破産や任意整理をする4つの方法と注意点

医師の債務整理を成功させる7つのポイント

医師というと借金や債務整理とは縁遠いイメージが強いかもしれません。

 

しかし、開業には多額の費用がかかるため、当初見込みよりも患者が少なくて医院の経営に行き詰まることもあるでしょう。

 

また、株取引での失敗などの本業とは異なる理由で多額の借金を抱えてしまうことだってあります。

 

私自身も、以前済んでいた部屋の近くに新しくできた医院が、開業まもなくして売りに出されていたのを見た記憶があります。

 

地元のタクシーの運転手がいうには、そのお医者さんは「夜逃げ」してしまったそうです。

 

医師であっても、借金に関する法律の知識があまりないという人は珍しくないでしょう。

 

医師であれば、かなり多額な借金を抱えたケースであっても、自己破産せずに問題を解決できることが少なくありません。

 

仮に、自己破産したとしても、他のお勤め人よりは遙かに早く再起できる可能性も高いといえます。

 

また、『現時点の収入では借金を完済するのは、不可能なのは頭の中で分かっている。』

 

『立場上、借金の相談が出来ず元金が減らないまま長年放置してしまっている。』

 

このような状態の方は、既にその借金を返済できる見込みはほぼありません。

 

手遅れになる前に、弁護士や司法書士に相談を行ってください。

 

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それでは解説をしていきます。

 

債務整理しても医師免許は剥奪されない

弁護士や司法書士、公認会計士のような国家資格は、自己破産すると一定期間資格制限を受けます。

 

しかし、医師免許は、債務整理の影響を全く受けません。

 

医師の欠格事由は、医師法によって次の事由が定められています(医師法3条・4条)。

 

未成年者、成年被後見人または被保佐人である者
心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
麻薬、大麻またはあへんの中毒者
罰金以上の刑に処せられた者
以上の場合のほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあった者

 

また、「医師としての品位を損するような行為のあった」ときには厚生労働大臣が医師免許を取り消すことができますが、債務整理は該当しません。

 

債務整理しても医療法人の理事を辞める必要もない

医師の人の中には、医療法人の理事(長)に就任している人もいると思います。

 

株式会社や合同会社といった一般企業の役員は、自己破産すると一度退任する必要があります(ただし、再任が可能です)。

 

しかし、医療法人の理事(長)は、自己破産しても退任する必要がありません。

 

医療法人の理事の欠格事由は、医療法46条の5第5項が次のように定めています(医療法46条の4第2項を準用)。

 

法人
成年被後見人または被保佐人
医療法、医師法、歯科医師法その他医事に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
上の場合のほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者

 

この規定にも自己破産(債務整理)を欠格事由とする定めは存在しません。したがって、医療法人の理事(長)である医師が自己破産(債務整理)しても、理事(長)を退任する必要はありません(ただし、内部の約款で退任事由としている場合を除きます)。

 

医師が債務整理する際のポイントと注意点

医師が債務整理するときには、かなり多額の借金を背負った場合に限定されるといって良いと思われます。

 

また、医師は債務整理しても、医師として働き続けることができるため、債務整理の選択肢も他の職業の人よりも広いといえるでしょう。

 

誰にも知られたくないときには任意整理が便利

医師に限らず「借金を返せない状況にあること」は誰にも知られたくないものです。

 

弁護士・司法書士が債権者と直接交渉する方法である任意整理なら、借金問題を抱えていることを誰かに知られるリスクはほとんどありません。

 

任意整理は、裁判所の手続きではないため、借金の額それ自体を減らすことはできません。

 

任意整理で可能なのは、「利息の免除」、「返済回数の見直し」といった方法で返済の負担を減らすことです。

 

したがって、毎月の収入に比べて借金が多額過ぎるときには、任意整理で解決できない場合もあります。

 

しかし、医師であれば、一般のお勤めよりも収入が高く、職業の社会的地位も高いため、多額の借金であっても任意整理で解決できる可能性があります。

 

任意整理については下記ページで詳しく解説をしています。

 

参考⇒任意整理のメリットとデメリット?債務整理で1番多い手続きの注意点

 

多額の借金を抱えたときでも個人再生すれば自己破産を回避できる

いまでは、多額の借金を抱えてしまった場合でも自己破産を回避できることが少なくありません。

 

裁判所の手続きである個人再生が認められれば、借金が大幅に減額されることがあるからです。

 

個人再生で返済しなければならない最低限の金額(最低弁済基準額)は、あらかじめ法律で決められています。

 

最低弁済基準額は、個人再生の対象となる借金(再生債権)の額に応じて異なり、下の表のとおりになります。

 

基準債権の金額 最低弁済基準額
100万円未満 借金の全額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1,500万円未満 1/5の額
1,500万円以上3,000万円未満 300万円
3,000万円以上5,000万円以下 1/10の額

 

なお、「個人再生」は、再生債権の額が5,000万円以下の場合に限り利用することができます。

 

5,000万円を超えるときには、通常の民事再生を利用することもできます。

 

保有財産が多いときには、返済額が減らないこともある(清算価値保障の原則)

個人再生は、「借金(元本)の額」それ自体が減額される手続きです。個人再生が認められ場、債権者はその意向を問わずに、回収できる金額を強制的に減らされてしまいます。

 

そのため、個人再生では、債権者を最低限保護するために、「清算価値保障の原則」というルールがあります。

 

「清算価値保障の原則」とは、個人再生の場合でも、「個人再生の時に自己破産していれば、回収できたであろう金額の返済は保障する」というルールです。

 

たとえば、「3,000万円の借金の最低弁済基準額は300万円」ですが、「債務者が保有する財産総額(清算価値)が500万円」であるときには、「500万円以上を返済する」再生計画を作成しなければなりません。

 

そのため、個人再生を申し立てた債務者が高価な財産を多数所有していたときには、個人再生しても返済総額があまり減らない場合もあります。

 

 

開業医が個人再生(自己破産)するときの注意点

開業医の方は、自らが医院を持っているため、個人再生(自己破産)で注意すべきポイントが勤務医よりも多くなります。

 

特に重要なポイントは、次の4点です。

 

滞納している税金や社会保険料などは一切免除されない
看護師などの従業員の未払い給料は一切免除されない
リースで用意した医療器具・事務用品などは引き上げられる可能性がある
医院の建設資金のローンに住宅ローン特則は利用できない

 

開業した医院が経営不振に陥ったときなどには、「税金の滞納」や「看護師などへの給料の未払い」が発生している場合があり得ます。

 

公租公課の滞納分や未払い賃金は、債務整理しても一切免除されないので注意が必要です。

 

個人再生の場合には、未払いの公租公課・給料が多すぎると再生計画が認可されない場合もあります。

 

次に、個人再生は「手続きの対象とする債務」を選択することはできません。

 

したがって、リース契約で用立てた医療機器や備品は、すべてリース会社に引き上げられてしまいます(そういう内容の契約になっています)。

 

医療機器や備品がなくなれば、医院を継続することが困難となる場合が少なくありません。

 

したがって、個人再生をして医院を継続する際には、リース会社と「別除権協定」を結ぶなどの措置を講じる必要があります。

 

医院建設のためのローンが残っている際にも注意が必要です。ローンを組んだ際に医院の建物や敷地に抵当権を設定していれば、個人再生によって抵当権者に差し押さえられてしまうからです。

 

この場合にも、医院継続のためには、リース契約の場合と同様に、抵当権者と別除権協定を結ぶ必要があります。

 

なお、医院は、住居用の不動産ではないので、マイホームの住宅ローンのときのように「住宅ローン付き」個人再生を利用することはできません。

 

ただし、医院が住居と兼用で、住居用スペースが敷地面積の1/2を超えるときには、住宅ローン特則を利用できる可能性があります。

 

ただし、上の場合でも、対象となる不動産に事業用のローンの抵当権が設定されているときには、住宅ローン特則を利用できないので注意が必要です。

 

個人再生については下記ページで詳しく解説をしています。

 

参考⇒個人再生は家を残せる大きなメリットがあるが2つのデメリットもある

 

自己破産から「早期の再起」をはかることも選択肢のひとつ

医師は自己破産しても医師免許を失わずに、医師をして働き続けることができます。

 

自己破産をすれば、その後に得た収入はすべて自由に処分することができます。

 

したがって、医師であれば、自己破産(免責)によって、すべての借金を棒引きすることで、早期の再起を図ることは決して難しいことではないでしょう。

 

自己破産しても「すべての財産を失う」わけではない

自己破産の最大のデメリットは、保有している財産を失うことです。

 

しかし、実際に自己破産しても「すべての財産を完全に失う」というわけではありません。

 

自己破産しても手元に残すことのできる財産の例は下のとおりです。

 

99万円までの現金
20万円以下の預貯金
生活に必要な家財道具(テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機・タンス・ベッドなど)
働く上で欠かすことのできない器具など
20万円以下の価値しかない自動車

 

自己破産については下記ページで詳しく解説をしています。

 

参考⇒自己破産はメリットしかない?家族や子供、仕事にデメリットはないの?

 

医師であれば、他の人よりも早くクレジットカードを作れることも

債務整理すると、信用情報に傷が付くため(いわゆるブラック入り)、新規の借金やクレジットカード発行ができなくなります。

 

信用情報に債務整理の記録が残るのは、5年〜10年(信用情報機関で異なる)です。

 

通常は、この期間に借金やクレジットカードの発行を申し込んでも審査落ちとなります。

 

しかし、医師は、「高収入であること」が一般的に知られていますし、審査における属性評価も最も高い職業です。

 

したがって、他の職業の人とは異なり、信用情報に債務整理の記録が残っている段階でも、融資やカード発行に応じてくれる金融機関がある可能性があります。

 

「ブラックリスト入りした顧客にお金を貸さない」という措置は、金融機関の自主判断に過ぎず、法律で禁止されている行為ではないからです。
実際にも、中小の消費者金融や、ノンバンク系信販会社などは、「現在の収入が十分であれば、過去の債務整理歴は不問とする」ことは少なくありません。

 

「医師の債務整理」のまとめ

医師は債務整理をしても、医師として働き続けることができます。そのため、他の職業の場合に比べて債務整理のハードルもかなり低いといえます。

 

借金があまりにも多額すぎるときには、個人再生で多額の返済を続けるよりも、自己破産した方が早期に再起できる場合もあるかもしれません。

 

他方で、世間体などを気にするあまりに無理な金策を続ければ、医師免許取消しのリスクが生じることもあります。

 

最近のヤミ金は、犯罪行為への荷担を要求する業者も少なくないからです。

 

借金の返済に行き詰まったときには、できるだけ早く弁護士・司法書士に相談するようにしましょう。

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